今回は、超等身大の青春＆音楽マンガとして大人気となっている「ふつうの軽音部」についてご紹介します! ギターに弦を張り替えるときの、あの“チュイーン”という不穏な金属音。
青春のはじまりは、えてして少し怖い。『ふつうの軽音部』の主人公・鳩野ちひろも同じだ。渋めの邦ロックをこよなく愛す新入生は、憧れの軽音部の扉を叩いた瞬間から、友情・嫉妬・プライドが入り乱れる“普通だけど普通じゃない”バンド戦争に巻き込まれていく。連載開始からわずか一年で 「次にくるマンガ大賞2024」Webマンガ部門１位、「このマンガがすごい！2025」オトコ編２位――SNS での熱量の高さは、「無名インディーが一夜でスターダムに駆け上がる」ロックシンデレラ・ストーリーそのもの。
本記事では、既刊６巻（７巻は 2025 年 6 月 4 日発売予定）の時点で約 58 話を数える本作の魅力を 5000 文字フルボリュームで紹介します!
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あらすじ：はーとぶれいく結成までの“歪み”
物語は、大阪市在住の女子高生ちひろが軽音部の門を叩く場面から始まる。
部内には天才肌の鷹見、情報屋の幸山厘（りん）、優等生ベーシスト藤井彩目、そして空気を読まない熱血ドラマー片野桃……と、ひとクセどころか十クセあるメンバーが集結。結成バンド「ラチッタデッラ」は利害入り乱れて早くも瓦解。新バンド「はーとぶれいく」が産声をあげるまでに、ちひろは挫折→路上弾き語り→覚醒という“ロックマンガ王道三段跳び”を踏むのだが、その振幅がとにかくリアルで面白い。
キャラクターの“ふつう”が導火線になる
- ここで、本作に登場するキャラクターについて紹介!
- 鳩野ちひろ ――本作の主人公。自称「陰キャ」だが、負けん気は強く努力家で、行動力もある。周囲の印象に残る独特の歌唱力を持つ。渋めの邦ロックが好き。
- 幸山厘 ――人当たりがいい裏で情報工作に長け、状況を思い通りに動かす謎多きベーシスト。鳩野の歌唱力を神々しいと表現するほど高く評価している。はーとぶれいくのベース担当。
- 内田桃 ――他バンド解散のきっかけを作ってしまった悲しい過去を持つドラマー。見た目は華やかで、コミュニケーション能力も高い。性格は陽気でリーダー気質だが、空回りしてしまうところも。はーとぶれいくドラマー担当。
- 藤井彩目 ――幼少期からいじめや陰口に遭い、そのトラウマから虚勢を張り何かと人を見下して陰口を言うことが多くて、自己肯定感が低く、恋と音楽の狭間で揺れる。ちひろの弾き語りを聴き衝撃を受け、最終的に「はーとぶれいく」のメンバーに。はーとぶれいくのギター担当。
- 鷹見陽介 ――“イケメン・上手い・モテる・でもクズ”を地で行くギタリスト。悪意というより浅はかさで他人を傷つける。「protocol.」のギターボーカル担当。
作者は、ときに彼らを残酷に、ときに滑稽に描写する。だからこそ、キャラクターの小さな一歩が読者の心臓を撃ち抜く。
テーマ：３つの“ふつう”が生む落差
批評家筋がよく指摘するように、本作は ①音楽経験者なら誰もが味わう部活の“ふつう”、②作品内で繰り返される〈私なんかでいいの？〉というキャラの“ふつう”、③読者の現実体験と地続きの“ふつう”――この三層を巧みに積み木のように重ねあわせ、そこから意表を突くドラマを落とし込む。だから１話先が読めるようで読めない。なまじ王道ジャンプ文法（努力・友情・勝利）を纏っているぶん、“裏切り”の瞬間はより刺さる。
作画と言葉――“ゆるさ”と“エモ”の二律背反
作者の出内テツオ3の描く線は決して太くはない。背景も必要最小限。ゆえに人物の微妙な目線、肩の震え、息継ぎの汗――そういった“余白”が強調されているように思う。セリフは一見ゆるくても、要所で放たれる 「あんたの声、ほんとは全部聴こえてんだよ」 のような短い一文が、ロックのリフ並みに脳内ループする。レビューサイトでは“肩の力が抜けたゆるさと突然訪れるエモさのギャップ”を評価する声が多い。
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